2016年3月3日

3月3日  増配の真実

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日生、2年連続増配 
日本生命保険は2016年3月期決算で個人契約者の配当を2年続けて増やす方針との発表があった。好調な三大疾病保障保険などの販売が背景にあり、本業のもうけを示す基礎利益が9年ぶりの高水準となる見通しとのことだ。約215万件の契約を対象に利益の還元を増やす予定。日銀のマイナス金利政策で生保の運用は厳しくなっているが、日生は強固な財務基盤を生かして安定配当を続ける方針である。他の大手生保も増配を検討する見通し。

日本生命の攻勢が続く。昨年10月にオーストラリア保険事業を買収する等、海外事業の拡大も奏功し、16年度3月期決算は増収増益の見通しである。海外で死亡保険や医療保険が人気化してきており、まだ成熟していない市場を開拓した結果といえるだろう。ただし、外部環境は決して良くない。マイナス金利の導入で、従来の国債運用による収益は望めなくなっている。また長らく業界のガリバー企業としてシェアを維持してきた日本生命ではあるが、近年では第一生命と保険料収入で首位の座を争っている。足元の収入増加は法人契約の寄与が大きく、個人契約と違って生涯に渡る契約ではなく中期的な増加だとする見方もある。金融緩和で溢れたお金を企業買収に使い、単純に収入面での規模が大きくなっただけで収益構造が根本的に改善しているとはいえない。相互会社である日本生命は保険加入者が株式会社にとっての株主にあたる。いわば今回の増配は契約者の安定化を狙った株価対策のようなものだ。後述する通り、本来の相互会社としての役割に合致しない。減収見通しのなかでも株主の人気取りのために配当を増やす上場企業が増えているが、目先の利益だけで身を切るような行動は本来の企業活動としても正しくない。デフレの原因となる値下げ競争が今後起こらないか、危惧される。

(市川 淳)

相互会社・・・保険業法に基づいて設立される法人で保険業を行うことを目的とする社団であり、保険契約者を社員とする法人をいう。「会社」と称するものの、社員に対して剰余金を分配することを目的とする法人ではないため、あくまでも非営利法人であり、営利法人としての会社ではない。