2016年1月5日

1月5日 サウジ・イラン 国交断絶の背景

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中東 国交分裂 原油市場に影響のおそれ
イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアがシーア派のイランと外交関係の断絶を表明し、中東の二大国の溝は決定的だ。バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)もイランとの対決姿勢を強めており、混乱の拡大は必至だ。中東の分裂は過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)の掃討や、原油相場の先行きにも悪影響をおよぼすおそれがある。

今回の騒動の直接のきっかけは、サウジアラビアによるシーア派の宗教指導者への処刑でした。対立する宗派の指導者を処刑してしまえば混乱が巻き起こることは明らかであるにも関わらず、なぜこのタイミングでサウジアラビアはわざわざ波風を立てようとしたのでしょうか。大きく二つの狙いがあったと推測できますが、その最大の理由となっているのは原油安です。
いま、サウジアラビアは国家の危機を迎えていると言っても過言ではありません。原油安により財政収支が著しく悪化し、積み上げていた海外資産を切り崩していることは先日触れました。これにより、手厚い国民への福祉にも改革の必要性が生じ、そうなると国民負担が増えます。サウジアラビアの王族には何人もの王子がいるのですが、ある王子は自らの資産から慈善団体に3兆円もの寄付を行ったり、2トンの麻薬所持で逮捕される王子がいたり、政治の重要なポストには当然ながら王族から選ばれた人間が就任します。国民への徴税強化という懸念とはうらはらに、王族の贅沢三昧な暮らしぶりや横暴ぶりに国民の不満が高まっています。
この国家の危機を救うため「シーア派への対立」という手に打って出たと見る事が出来ます。中東の不安が高まると、原油価格は高騰する可能性があり、すなわちサウジアラビアの貿易収支の改善につながります。また国外に敵を作ることで、国民の不満・怒りの矛先を向ける狙いもあるでしょう。敵を作り、国民感情をコントロールする手法は人類が幾度となく繰り返してきた政治手法の一つです。
シェール革命以前であれば、ここで「世界の警察」を自負していたアメリカが動いていたのでしょうが、自国で石油を生産できるようになってからのアメリカは、中東情勢に対して関わりを弱めているように感じます。産油国を守る経済的な必要性が薄れている上に、今年任期満了を迎えるオバマ大統領が、これまでの弱腰な姿勢を変えて大きな手柄を取りに来るとも考えにくいです。アメリカは原油の輸出も解禁したばかり。今回の騒動で原油価格が上がることを、むしろ歓迎すらしているかもしれません。

スンニ派・シーア派・・・世界に約16億人いるイスラム教徒は、約9割のスンニ派と1割程度のシーア派などに分かれる。預言者ムハンマドの後継者をめぐって違いが生まれた。ムハンマドのいとこで4代目カリフ(指導者)であるアリーの血統を正統とみなすシーア派に対し、スンニ派は信者の話し合いで選ばれた者がカリフになるべきだとする。