2016年11月8日

11月8日 クルマの責任 

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自動運転、保険で補償 東京海上が無料特約 来春、全契約者に 
ハンドルやブレーキを自動操作する自動運転車の開発が進んだ結果、保険対応も課題になってきた。東京海上日動火災保険は2017年4月から、自動運転中の事故を自動車保険の補償対象に加える。自動車保険の契約や更新時に全契約者に無料の特約として提供し、事故の被害者が長期間救済されない事態を避ける。自動運転を対象にした保険は国内初となる。自動運転が普及しつつあるなか、ビジネスモデルが変わり始めている。

今年五月にアメリカで起こったテスラモーターズ社製の自動運転車での死亡事故は記憶に新しい。事故は自動だろうが手動だろうが起こりうる。問題は事故が起こった時の対応だ。責任はどこに、誰にあるのか、保険金でどこまでカバーされるのか、ドライバーの一生を左右する補償という問題に、損害保険業界のガリバー企業、東京海上日動が乗り出した。自動運転状態、すなわちドライバーの運転が及ばない場合に起きた事故に対し、迅速な保険金支払いを行う。本来自動運転中に起きた事故の原因は特定が難しい。自動車自体の故障や不具合なのか、通信回線をハッキングされた結果なのか、搭載しているソフトに不備があったのか・・・調査、判定に時間がかかり、補償対応に遅れが出る。そこで保険契約に特約を付け、まず事故を起こしたドライバーに保険金を支払い、原因追及を後回しにして対応することとした。
画期的で、ドライバー、被害者を護る消費者の側に立った素晴らしい制度だとは思う。しかし、今度は加入者が支払う保険料をいくらにするか、という問題がある。通常、保険料の設定はアクチュアリーと呼ばれる数学のプロが統計学を用いて計算する。統計には過去の実績データが必要だ。しかしこの自動運転という新技術に関してまだ人類は未踏の領域で、十分なデータが現状少ない。皮肉なものだが、事故が増えないとデータも増えない。今後、AIを活用したシミュレーション等、精度の高い仮想上のデータ測定なども主流になってくるかもしれない。我々の生活を守る保険の新世界はまだ始まったばかりだ。

 

(市川 淳)

アクチュアリー・・・確率・統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う数理のプロフェッショナル。確率論・統計学などの数理的手法を活用して、主に保険や年金に関わる諸問題を解決し、財政の健全性の確保と制度の公正な運営に務めることを主な業務とする専門職。主に保険会社や信託銀行、官公庁などに所属して、保険や年金の料率設定、決算などに関わる保険数理・年金数理業務をはじめ、商品開発、リスク管理分析、長期計画の策定などに携わることが多い。また近年は、コンサルティング会社に所属し、保険や年金に関わるコンサルティングを行うアクチュアリーや、監査法人に所属し、中立的な立場から外部監査に携わるアクチュアリーも増加している。