2016年7月26日

7月26日 企業が背負う従業員の未来

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

年金債務最大 上場3600社で91兆円昨年度末、マイナス金利で膨張 積み立て不足26兆円、重荷に
上場企業の年金債務が2015年度末で91兆円と過去最大に膨らんでいる。年金債務は企業が年金・退職金を支払うために現時点でどれだけ蓄えておくべきかを示している。日銀のマイナス金利政策の影響を受け、金利水準が全般に下がって運用環境が悪化し、年金債務を厳しく見積もらないといけなくなった。この結果、企業年金の未積立額は26兆円に拡大し、業績の重荷になるのが避けられない情勢となっている。

定年まで真面目に勤めあげ、退職金と年金で豊かなリタイア後の生活を楽しもう、そんな日本人の定年後のライフプランニングが崩れてきている。公的年金の運用失敗や財源不足が叫ばれて久しいが、同様の問題が企業年金まで及んできた。企業は退職者に退職金を支払うための原資を積み立て、将来の支払いに備える。その際キーワードになるのが「収益率」と「割引率」という言葉だ。簡単にいうと、今のお金がいくらになるかを計算するのが「収益率」で、反対に、将来いくらのお金が必要でその数字に対して今いくらあればいいのかを計算する際に「割引率」が使われる。概ね、「収益率」が上がれば「割引率」も上がり、反対もまた同様になる。すなわち、運用が上手くいく見通しがあれば、今手元にあるお金が少なくてもいい、という判断である。これら値の設定は国債金利が基準となるが、基本的に企業が独自に設定できる。その数値が大きく下げているのが現状だ。すなわち、企業が会社の未来や金融市場に不安を感じ、付け加えて足元で進むマイナス金利の影響から、運用から得られる収益率の低下に拍車をかけている状況がある。財務上は、割引率の低下から将来の支払いに備えて今必要な資金を負債として計上する必要となり、企業業績を圧迫することになる。第一4半期の決算発表が本格化するなかで、景気回復に冷や水を浴びせないか、心配である。

(市川 淳)

年金債務・・・正確には退職給付債務と呼ぶ。平成12年度から導入された退職給付会計において測定される退職金・年金に係る債務のこと。従業員の将来の退職時に見込まれる退職給付の総額のうち、測定時点までに発生していると認められる額について、割引率等の計算基礎率と予想される残存勤務年数に基づいて割引計算を行い、現在時点の価値に評価したもの。米国の年金会計基準(FAS87)や国際会計基準(IAS)で測定される「予測給付債務(Projected Benefit Obligation)」と同様の債務であるため、退職給付債務のことを「PBO」ということもある。