2016年5月24日

5月24日  揺れる欧州

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EU離脱なら景気後退 英政府が試算、経済規模3.6%縮小
英国の欧州連合(EU)からの離脱問題で同国政府は23日、離脱がもし決まれば直ちに景気後退に陥るとの分析を発表した。離脱の是非を問う6月23日の国民投票が1カ月後に迫っており、キャメロン首相ら経済損失を訴える残留派がやや優勢だが、離脱派との差は小さい状況だ。投票の行方を左右するのは残留支持が多い若年層の動向である。投票率が上がらなければ「EU嫌い」が多い中高齢層の意思がより反映され、離脱のリスクが高まると見られる。

域内を自由に物や人が行き来する、国境を越えて国と国が結びつく理想が崩れつつある。イギリスがEUからの離脱を検討し、国民投票というかたちでその是非を問う予定だ。相次ぐテロの脅威や、移民の流入が、かつて理想とした「自由」の諸刃の剣となって今ヨーロッパを揺るがしている。EU域内ではシェンゲン協定のもと、人の移動が国境での検査等がいらずに移動が可能だ。アラブやアフリカ等、政局や治安の悪い国々から流入してくる移民、難民は、ヨーロッパ圏内でも比較的裕福なイギリス・ドイツ・フランスに流れ込んでくる。2015年の総選挙でキャメロン首相率いる保守党は、選挙の公約にEU離脱を問う国民投票を2017年までに行うと融和策を盛り込んでいた。一年早まったのはやはり記憶に新しいパリでの爆破テロや足元で進む失業率の悪化を見て、待ったなし、と判断した結果だろう。安い労働力が国内に流れ込んでくると、国民の職が奪われかねない。特に中高年層には由々しき問題だ。投票率の高いこの層の意見が通りやすいのは事実で、EU離脱に向けた筋道が見えてきている。無論、EUに留まるメリットもある。減免された関税のもと、農産物はフランスより、工業製品はドイツより輸入したり、イギリス国内にはシティを中心とした金融街に資金が入りやすくする、そうした仕組みを用意したのもEUだ。EUは失敗だった、で離脱するのは簡単だが、ただ経済を縮小させる結果になっては意味がない。国民のために慎重な判断が望まれるだろう。

(市川 淳)

EU・・・EC(欧州共同体)を基礎に、外交・安全保障政策の共通化と通貨統合の実現を目的とする統合体。1993年11月マーストリヒト条約欧州連合条約)の発効により創設。域内の多くの国では出入国や税関の審査が廃止されており、人や物が自由に移動できる。また、単一通貨ユーロが導入されている。2012年、欧州国家間の平和と和解に貢献したとしてノーベル平和賞を受賞。本部はベルギーのブリュッセル。